松居 和(尺八奏者、音楽プロデューサー、元埼玉県教育委員会教育長)
「いい親になりたいという気持ちこそが、人間社会の形成に重要」
松居和 日本にはまだ救いがある。家庭が崩壊していないという点では「奇跡の国」です。これだけ、実の父親がまだ家庭にいるという国は欧米ではあり得ない。先進国でありながら、犯罪率が異常に低い。
義務教育が普及して、50~60年たつと大体家庭は崩壊していく。保育や学校教育が子育ての肩代わりをし始めると、親が育たなくなる。子育ては、子どもを育てる以上に、親が親らしくなるためのプロセスでした。弱者を可愛がることに幸せを感じる。自分を「いい人間」だと理解する「利他の作業の出発点でもあるのです。幼児たちが、親の人間性を耕すことが、子育ての本質でる。
それに「教育」という言葉が入ってくると、「子どもをどう育てるか」という視点に偏っていく。
「いい親になりたい」と思った時、その親はいい親なのです。いい親は、親の心持ちのことであって、子どもがどう成長するかという結果ではない。親がどれだけ親らしく生きるか。「いい親になりたい」という親の心持ちが満ちることが、人間社会の形成において一番重要なのです。
Saya 和さんのご著書「ママがいい!」ではないですが、母子の分離施策がとられ、0・1歳児から預けられることになると、親が「育てられる」時間がなくなるということですよね。その発想は政策を作る人々の頭にはないでしょうね。
松居和 自民党の会議や衆議院で参考人として招致された際に、この話はしました。多くの政治家にも一対一で話をしました。皆さん理解はしますが、それよりも選挙に勝つことが大切なんでしょう。子供は投票できません。待機児童解消を訴えた方が票になるんです。その結果、子育てにサービス産業が入ってきている。20年くらい前に、保育園の定款にサービスという文字が入ったとき、みんな違和感を感じたのです。子どもに対するサービスならよいですが、大人に対するサービスになってしまうのが見えた。政府の「子育て支援」を、保育者たちは「子育て放棄支援」と呼んでいた。その結果、保育士がいなくなり、それが義務教育に連鎖している。義務教育は「義務」ですから、政府は逃げられません。本気で、この国のことを考える政治家が出てきてほしいですね。
Saya 政治家を選ぶ有権者側が、しっかり判断することも大切ですね。和さん本日はありがとうございました。松居和チャンネル(https://www.youtube.com/@kazu.matsui)で、さらにご著書「ママがいい!」の詳しい解説や、日本が進むべき子育て社会のありかたなどについてお話ししています。
ぜひ皆さまにも頂ければと思います。

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